インタビュー&テキスト by JY
多彩なインフルエンサーたちに、ファッションにまつわる話を聞くFARFETCHの独占インタビューシリーズがスタートする。第1弾となる今回は、セレクトショップLieuの経営者であり、ファッション好きが高じて始めたというYouTubeではチャンネル登録者数10万人以上を誇るというなかむさん@nakamu_64にインタビュー。
Maison Margiela(メゾン・マルジェラ)やComme des Garcons(コム・デ・ギャルソン)、doublet(ダブレット)、Gosha Rubchinskiy(ゴーシャ・ラブチンスキー)といった得意エリアでは、アイテムを見ただけでシーズンを言い当てるマニアックさも持ち合わせているなかむさん。古着屋の店長を務めていたという経歴から、各アイテムのディテールはもちろん、ブランドの沿革やデザイナーの経歴についても豊富でディープな知識を持っているそう。
今回はそんななかむさんが100着以上保有し、YouTubeでもたびたび解説しているMaison Margiela(メゾン・マルジェラ)と、春の注目アイテムについて話してもらった。
何かにすがりたくて…
Q. マルジェラを好きになったきっかけは?初めて買ったものはなんですか?
A. 大きな挫折を味わっていた高校時代に、何かにすがりたくてネットで探して見つけたものが、マルジェラのショーやアーティザナルのアイテムだったんです。最初は変わった服だなと思って手に取りましたが、そこからどっぷりマルジェラの世界にはまっていきました。
初めて買ったのは、古着屋で見つけたロイヤルブルーのコットンニット。クルーネックで、インサイドアウトのデザインになっていて、大きめに着たくてXLのサイズを買いました。
Q. これまで購入したマルジェラのアイテムで一番のお気に入りは何ですか?そしてその理由は?
A. 2007年秋冬のハの字(5Zip)ライダースジャケットです。毎年リリースされているアイテムで、この年のものはアームが若干細いものの、ボックスに近いシルエットが好きで、長年愛用しています。
さりげないデザイン性
Q. 2007年コレクションで特筆すべきことは?今と比べて、どうですか?
A. 秋冬で言うと、スタッズコートはアイコニックで有名かと思います。スタッズがステッチのように入っていて、さりげないデザイン性に非常にマルジェラらしさがあっていいですよね。また、当時はまだ、デザイナーがマルタン・マルジェラ本人だったので、彼らしさが溢れる、変わっているけどどこかいいコレクションでした。
今のマルジェラと比較すると、やはりデザイナーが違うので作られているものも大きく変わっていると思います。今は、足袋や四つタグを色々なアイテムに転用していてかなりキャッチーになったなと感じます。それがいいか悪いかは色々な意見があるとは思いますが、僕は多くの人にマルジェラを手に取ってもらえるならキャッチーでもいいんじゃないかなと思います。個人的には、やはり昔のマルジェラをネットや古着屋で探す方が好きですが(笑)。
マルジェラを嫌いとかダサいって言ってる人を見たことがない
Q. マルジェラは特に日本人に人気がありますが、それはなぜなのか、また、あまり知られていないマルジェラの魅力などあれば教えてください。
A. 誰でもコーディネートに取り入れやすい部分が日本人の性質と相性いいんじゃないですかね。僕は今までマルジェラを嫌いとかダサいって言ってる人を見たことがないです(笑)。マルジェラはオーバーサイズのアイテムや、今やいろんなブランドで取り入れられているインサイドアウトやデストロイの手法の先駆けとも言える存在です。今のマルジェラも、その手法を引き継ぎつつ、現代版にアップデートされていると感じるので、そういう歴史の部分も感じながら服を見たり着たりするとおもしろいんじゃないかなと思います。
Q. マルジェラのメンズジュエリーの魅力は?これから手に入れるとしたら、何がおすすめですか?
A. メンズでもレディースでも、どんなスタイルの方でもコーディネートに取り入れやすいデザインかつ、唯一無二の存在感が、最大の魅力だと思います。これから手に入れるなら、まずはリングかなと思います。自分が直感的にいいと思ったデザインを買うのが最初は一番です。
僕にとってユニフォーム
Q. この春狙っているマルジェラのメンズアイテムとその理由を教えてください。
A. 毎シーズンリリースされているアイテムですが、エルボーパッチのニットを新調したいと考えています。エルボーパッチのサイズ感は時代に関係なく着られるレギュラーフィット。何にでも合うし、これさえ着れば間違いないと思わせてくれるようなアイテムだから、僕にとってはユニフォームみたいなものなんです。
芸術性と一緒に出かけられる
Q. マルジェラに次ぐお気に入りのブランド、または今注目しているブランドを教えてください。
A. 幅広く見るようにはしていますが、Jil Sander(ジル・サンダー)、Dries Van Noten(ドリス・バン・ノッテン)、Y/Project(ワイ・プロジェクト)、BLESS(ブレス)、Kota Gushiken(コウタ・グシケン)、MASU(エムエーエスユー)に、最近は特に惹かれます。これからの時代を引っ張っていってもらいたいと感じるようなブランドです。
Q. ファッションYouTuberとして、何を一番オーディエンスに伝えたいと考えていますか?
A. ファストファッション全盛期の今だからこそ、デザイナーズブランドの魅力を色々な方々に伝えていければと思っています。デザイナーズブランドは、絵画や彫刻を買ったりするのと同じ様な芸術性があり、しかもそれらと一緒に外に出かけられるというのが素晴らしい魅力だと思います。
なかむ
株式会社Lieu代表取締役。ファッションYouTuber。大学卒業後、IT系の広告代理店に就職。
その後ブランド古着屋broochに就職し、同店PRとして2017年にYouTubeチャンネルを開設。現在、ファッション系YouTuberとしてはトップクラスのチャンネル登録者数(12.9万人)を誇り、動画の総再生回数は3655万回にも上る。2019年brooch退職、株式会社Lieuを創立。服好きが集まって交流するような場所をつくりたいという思いから、セレクトショップLieuを2019年にオープン。自身がオーナー兼バイヤーを務める。
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