farfetch community2021年5月26日水曜日

ファッションジャーナリストのマスイユウが体現する、ジェンダーフルイドな着こなし

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インタビュー&テキスト by JY

<ダイバーシティ>は今や世界のスタンダードとなり、ファッションではジェンダーの垣根がなくなりつつある。ロンドンと浜松を拠点にグローバルに活躍するファッションジャーナリストとしてだけでなく、インフルエンサーとしても知られるマスイユウ@yumasuiが、ユニセックスや異性のアイテムを取り入れたジェンダーレスな着こなしをご紹介。

Q. ユウさんは、普段からジェンダー問わず自由に服選びをしているんですよね?
 
A. 昔から服を選ぶのに、性別を考えたことはないんです。だからメンズもレディースも着る。<ジェンダーレス>と言うと、異性の服を着る中性的な響きがあるけど、実際にはファッションはユニセックス化が進んでいます。例えば、小さなサイズはレディースで、大きなサイズはメンズ的な。<Shared Wordrobe(シェアード・ワードローブ)>という表現もありますね。今回着ているDoublet(ダブレット)」なんかはいい例かも。性別や年齢を選ばないダイバーシティなブランドと言っても過言ではないですね。
 
 
Q. 2018年にLVMHプライズのグランプリを受賞し、世界から注目を集める個性派日本人デザイナーですね。Doublet(ダブレット)の魅力を教えてください。
 
A. <笑い>があるから好き。どのアイテムにも人を笑顔にする小ネタが隠されているんですよ。それはUber Eats風のレザーミニバッグだったり、テディベアがひょっこり顔を出すスウェットパンツだったり、某有名ジュエリーブランドのような色のTシャツだったり。デザイナーの井野将之さんはワシと同じくらいの年齢だから、見てきたものや体験してきたことが似ていて、笑いのツボが一緒なんですよね。そこもハマっている理由かも。
ジェンダーレスな格好はするけど、実はまだスカートには抵抗があって手を出していません。スコットランドのキルトは持ってるんですけどね(笑)。

Q. とは言っても、ハイヒールは履いていますよね?
 
A. 「実はメンズなんですよ。Eytys(エイティーズ)のシューズだから、正確に言うとユニセックス。スニーカーであれ、レザーシューズであれ、レディースからメンズまで幅広いサイズを展開しているんです。それに、ここ数シーズンはメンズ向けのハイヒールもよく見かけるます。2020秋冬のDries Van Noten(ドリス・ヴァン・ノッテン)のプラットフォームブーツは印象的だったし、Pierre Hardy(ピエール・アルディ)も初めてハイヒールを出していた。コアなフォロワーの多い英国のメンズウェアデザイナー、Martine Rose(マーティン・ローズ)もヒールの高いローファーやブーツを定番として提案していて、それをレディースサイズでも展開していますし。
 
 
Q. ユニセックスだけでなく、レディースのアイテムも取り入れることもあるんですか?
 
A. バリバリのレディースも着ますよ。フェザーで装飾されたジーンズは、イギリスとポルトガルを拠点にするデザイナーデュオ、Marques Almeida(マルケス・アルメイダ)のレディースアイテム。彼らのブレないグランジスタイルは、自分のスタイルにすごくフィットするし、男女問わず着られるものが多い。もちろんレディースブランドだから、ゴジラと写っているラッフルトップスのように女子力が強いピースもあります。
その昔、インスタグラムが流行る15年くらい前、ひょっとしたらブログブーム以前に1枚のスナップで脚光を浴びたことがあるんですけど、その時に着ていたのがニコラ・ジェスキエール時代のBalenciaga(バレンシアガ)のフローラルトップ。この時のイメージがあるから、(自分が)レディースを着ることは周知済みなんです。

Q. そんなマスイユウのジェンダーレススタイルで欠かせないものとは?
 
A. ハートモチーフは、自分にとっての大定番。昔は女性的なイメージが強かったけど、Prada(プラダ)のようなラグジュアリーブランドがメンズに使ったり、Ami Paris(アミ・パリ)のようにグラフィカルなロゴでカジュアルに落とし込んだり、毎日の着こなしにもだいぶ取り入れやすくなった。クリスタルのイヤリングはロンドンの若手デザイナー、Ashley Williams(アシュリー・ウィリアムズ)のもの。レディースブランドだけど、ショーには男性モデルも出てきます。一般的にはメンズブランドのショーに女性モデルというイメージが強いけど、その逆もあるわけ。
 
 
Q. これからジェンダーレスに挑戦したい人にアドバイスはありますか?
 
A. 小物は、異性のアイテムを取り入れるいいきっかけになるかも。レディースの方がカラフルだったり、デザイン性があったりして、かわいいですよね。中国で最注目の若手デザイナー、Susan Fang(スーザン・ファン)のガラスビーズをあしらった《バブル》バッグはスペシャル。斜めがけタイプがあったり、赤や黒などのカラーバリエーションもあったりします。そして、BOYY(ボーイ)も愛用しているアクセサリーブランドのひとつ。ハンドバッグは女性インフルエンサーのユニフォームみたいなものだけど、ミニバッグやケータイケースみたいな男子が使えるアイテムもある。基本的に、ワシは<イロモノ>や<光りもの>じゃないとダメなんですよね。それに面白さや笑えるかが重要。

Q. 面白さや、笑えるかのポイントは?アイコニックなアイテムは?
 
A.  基本的にちょっと笑えるひねりのあるデザインが好き。JW Anderson(ジェイダブリュー・アンダーソン)のキャップ型バッグなんか、すごくいい。ちなみにJWAは、今のジェンダーレスの流れのおいて、すごく重要な存在。デビュー当初からメンズのバギーなテーラードパンツに共布の大きなリボンをつけるなど、その片鱗を見せていました。レディースをスタートしてからはメンズのデザインを女性サイズで提案したり、逆にメンズウェアにレディースの要素をどんどん取り入れるようになったり。この前、Moncler(モンクレール)とのコラボでリバイバルしていたけど、2013秋冬はその代表的なもの。ロンドンを中心に巻き起こったジェンダーレスムーブメントの原点の1つかもしれません。
 
 
Q. ジェンダーレスな着こなしをするようになったきっかけは?
 
A. 今、巷では90年代やミレニアムのファッションがカムバックしています。だけど、ワシの育った90年代半ばには、ストレートの男子でもぴったぴたのチビTシャツにおっきなフレアのパンツを合わせ、髪型をシャギーが入ったボブにした、<フェミ男>というフェミニンな装いをするムーブメントがあった。石田純一の息子のいしだ壱成や、今は筋肉体操で知られる武田真治は、その代表格でしたね。海外に目を向けると、ファッショニスタに影響を与えている結構エッジの効いた女装癖のあるデニス・ロッドマンみたいな人もいたけど、あれは単発的。一方で、<フェミ男>は日本特有のトレンドとして存在した。だから、ジェンダーレスへの抵抗は少ないかな。基本的に自分を国籍や人種、性別、セクシャリティでカテゴライズしないから、自分にとっては自然なことなんです。
 
Q. 異なるジェンダーの服を着ることがごく普通になってきている例はありますか?
 
A. 例えば、ウィル・スミスの息子のジェイデン・スミスは、ニコラ・ジェスキエールの手掛けるLouis Vitton(ルイ・ヴィトン)のレディースアイテムを着ている。その一方で、ビリー・アイリッシュのようにメンズウェアを着る女性アーティストもいます。そして、マッチョやグラマーのイメージが強かったヒップホップやR&Bの男性ミュージシャンが異性の服を着るようになったのは、革新的なことだと思う。ファッションに造詣のあるファレル・ウィリアムスやカニエ・ウエストのような存在も意識を変えた一因かもしれませんね。
まあ、今って<入れば>なんでも着ていい時代になったと思いますよ。ほら、あらゆるアイテムと言いたいところだけど、靴はサイズの結構違うからキツいでしょ(笑)?

マスイユウ:
静岡県浜松市出身。ロンドンの伝説的なコンセプトショップ『The Pineal Eye』からキャリアをスタート。バイイングの経験を積みつつ、フリーのバイヤーなどとして活躍する。ジャーナリストに転身後は、ヨーロッパからアジア、アフリカまで、世界を駆け回りファッションウィークをリポート。『繊研新聞』や『SPUR』のように幅広い媒体に寄稿している。新人デザイナーの発掘に長けており、LVMHプライズのスカウトも務める。その一方で、インフルエンサーとしての顔を持ち、自身のSNSだけでなく、ブランドとのコラボコンテンツも発信している。自称浜松餃子親善大使。

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