ファッションの常識を覆す先進的なデザインで常に時代を切り開いてきた Raf Simons(ラフ・シモンズ)。自身の名を冠したレーベルのほか、Jil Sander(ジル・サンダー)や Dior(ディオール)、Calvin Klein(カルバン・クライン)など名だたるブランドのクリエイティブ・ディレクターとしてもその才能を発揮してきました。反抗的なユースカルチャーと伝統的なテーラードスタイルを組み合わせたアイコニックなスタイルは、数々の著名人をも虜にしています。本記事では、ラフ・シモンズの歴史と象徴的なデザイン、定番アイテムを解説します。
ラフシモンズの歴史 〜インテリアデザイナーからファッションデザイナーへ
1968 年 1 月 12 日、Raf Simons(ラフ・シモンズ)はベルギーのネールペルトで誕生しました。大学で工業デザインと家具デザインを学びながら、〈Antwerp Six(アントワープ・シックス)〉の一人であるベルギー人デザイナー Walter Van Beirendonck(ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク)の元でインターンとして経験を積みます。大学卒業後、ラフはインテリアデザイナーとして活動していましたが、ウォルターに誘われて目の当たりにした 1990 年春の Martin Margiela(マルタン・マルジェラ)のショーに感銘を受け、ファッション業界への転向を決意。1995 年にアントワープ王立美術アカデミーのファッション学科長 Linda Loppa(リンダ・ロッパ)の後押しで初のメンズ・コレクションを制作し、自身のブランドを立ち上げました。反骨的なユースカルチャーと伝統的なテーラードスタイルを融合させたそのスタイルは、瞬く間に多くのファンを獲得します。
数々の有名メゾンのクリエイションを手がける
2000 年、ラフは休暇をとるために 1 年間活動を休止。同年、ウィーン応用美術大学のファッション学部長に就任し、2005 年まで在任しました。2001 年にファッション業界に復帰し、2005 年にはメンズウェアのセカンドライン〈Raf by Raf Simons(ラフ・バイ・ラフ・シモンズ)〉を設立。この年、ミニマルかつ控えめなデザインで知られる Jil Sander(ジル・サンダー)のクリエイティブ・ディレクターに任命されます。レディースのデザイン経験がなかった彼のキャリアに、このポジションは大きな影響を与えました。そして2006 年秋に初のコレクションを発表。ブランドが守り続けてきたミニマリズムのルーツに敬意を払いながらも、彼自身のクリエイティビティを見事に落とし込みました。
2012 年 2 月にジル・サンダーを退社したラフは、その 2 カ月後に Christian Dior(クリスチャン・ディオール)のアーティスティック・ディレクターに就任。2012 年秋のオートクチュールで初のコレクションを発表します。ディオールのロマンティックな美学に忠実でありながらも、現代的な感覚を取り入れたことが高く評価されました。
2013 年、アディダスのスニーカー〈スタンスミス〉を長年愛用してきたラフは、同社と契約を結び、コラボレーションコレクションを発表。鮮やかな色彩とパンチングによる「R」のディテールでアップデートされたコラボモデルは瞬く間にヒット作となりました。
ラフは 2015 年 10 月にディオール退任しを発表、翌年には Calvin Klein(カルバン・クライン)のチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任します。ブランドのコレクションラインを〈Calvin Klein 205W39NYC〉 と改名し、ニューヨークファッションウィークで初のショーを開催。アメリカ人アーティスト Sterling Ruby(スターリング・ルビー)の作品とともに、多文化が共存する古き良きアメリカをアウトサイダーの視点で表現しました。2017 年にはCFDA アワードのメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤーとウィメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤーの両方を受賞しています。
2018 年にカルバン・クラインを去り、2020 年に Miuccia Prada(ミウッチャ・プラダ)とともに PRADA(プラダ)の共同クリエイティブディレクターに就任。彼のデビュー作である 2021 年春夏のミラノコレクションは大きな話題を集めました。
2022 年 11 月、自身のブランドの終了を発表。10 月にロンドンで発表した 2023 年春夏コレクションを最後に、27 年の歴史に幕を下ろしました。
ラフ・シモンズの象徴的なデザインと定番アイテム
ラフ・シモンズはジル・サンダーやディオール、カルバン・クラインでの活躍によって、その名を広く知られるようになりましたが、自身の名を冠したメンズブランドでも多くのブランドやデザイナーにインスピレーションを与えてきました。彼のストリートなアプローチやサブカルチャーへの愛、メッセージ性の強いグラフィックは、今やメンズウェア業界の至る所で目にすることができます。以下ではラフ・シモンズの象徴的なデザインやシグネチャーアイテムについて解説します。
# 01 ボマージャケット
ラフ・シモンズのアイコンピースと言えば、ボマージャケットです。特に、Riot Riot Riot 期(暴動期)と呼ばれる 2001 年秋冬コレクションで登場した迷彩柄のボマージャケットは、Travis Scott(トラヴィス・スコット)や A$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)をはじめとする多くの著名人が着用したことや、オークションで高額取引されたことで話題となりました。ビッグシルエットと背中に施されたプリントやスローガンがポイント。
# 02 オーバーサイズニット
ビッグシルエットはラフ・シモンズを象徴するデザインの一つ。これまでのコレクションでも度々登場してきましたが、中でも 2016 年の秋冬コレクションで発表されたオーバーサイズドデストロイニットや、2017 年秋冬でリリースされた “LOVE RF” ニットはカルト的な人気を集めました。ハートモチーフやアイコニックなロゴをあしらったポップなデザインなら SNS でも熱い視線を受けること間違いなし。
# 03 グラフィック T シャツ
10代の頃、音楽に没頭して過ごしたラフ・シモンズのデザインには、自身が影響を受けたアーティストや音楽から得たインスピレーションがよく見られます。パンクなグラフィックやアイキャッチーなモノクロ写真、メッセージ性のあるスローガンをあしらった T シャツは、ブランドを象徴するアイテムとして人気。一枚でコーデが決まるプリント T シャツは、持っておくと重宝します。
# 04 デニムシャツ
ラフ・シモンズの定番アイテムであるオーバーサイズなデニムシャツは、カラーブロックのディテールが特徴であり、様々なバリエーションで展開されています。ゆったりとしたシルエットなので、インナーに T シャツやニットを合わせたレイヤードスタイルもすっきりまとまります。ボトムスはシンプルなデニムやスラックスがおすすめ。
# 05 モッズコート
ラフ・シモンズのコレクションの中でも特に人気の高いモッズコート。イギリスのロックバンド Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)の代表的なラストアルバム『Closer』から着想を得た 2003 年秋冬コレクションで登場したモッズコートは、コレクターの間で名作と称されており、”Power, Corruption, and Lies” の文字が刻まれたアーカイブピースに至っては中古市場で高額取引されているほど。普段の着こなしにさりげなくミリタリーなムードを添えるモッズコートは、秋冬の定番アウターとして長く活躍してくれるでしょう。
# 06 ランナー
2020 年秋冬コレクションから始動したラフ・シモンズのフットウェアライン。楽観的な未来主義”をテーマにした 8 種類のスタイルで構成されており、スポーツウェアから着想を得た機能的でミニマルなデザインが特徴です。過去の SF 映画を彷彿させる未来的なスニーカーや、スニーカーソールとブーツを合体させた革新的なシューズにもご注目ください。