「VOGUE(ヴォーグ)」をはじめとする雑誌や、セレブリティのスタイリングなど幅広く活躍するスタイリスト仙波レナさん。Farfetchでは彼女を迎え、ファッションにまつわる”あれこれ”を語ってもらう新企画「Rena’s Talk」をスタートします。第1回目はレナさんがスタイリストになるまでの道のりについて。きっかけや仕事の醍醐味、気になる仕事服についても聞いていきましょう。
Text&Edit : Mio Koumura
ーレナさんがスタイリストになろうと思ったきっかけは何だったのですか?
私が高校生の頃はリンダ・エヴァンジェリスタやナオミ・キャンベル、クラウディア・シファーらが台頭したスーパーモデル時代。彼女たちを撮影したピーター・リンドバーグの雑誌写真や、当時大内順子さんが出演されていたファッション通信を見て憧れていたんです。特にランウェイで歩く彼女たちには、今までに見たことのないような”女性特有のかっこよさ”があり、「どうしたら彼女たちと仕事ができるんだろう?」って。デザイナーやヘアメイクなど思い当たる仕事の中で、唯一「私にもできるかも」と思えたのがスタイリストだったんです。
ーその後すぐにスタイリストへの道に進むのではなく、一般企業での社会人経験もあるとか?
スタイリストになるために専門学校に通いたかったのですが、親からは「冗談じゃない」と即反対されてしまい(笑)。短大まで卒業するという理由で高校を選んでいたので、予定通り短大に通い、就職しました。入社した頃はスタイリストへの夢は忘れていましたが、それから数ヶ月で「ここは私がいる場所じゃないな」と感じるようになり、入社から1年後には退職するつもりでスタイリストを目指すことに決めたんです。
ーまずは何から始めたんでしょうか?
偶然、部署の先輩にスタイリストのお知り合いがいたのでお会いして、その方から「就きたい人についた方がいいよ」とアドバイスをいただきました。それからいつも購入している雑誌で好きなページを感情のままにスクラップをし、数ヶ月後に見返してみると地曳いく子さんがスタイリングをしているページが一番多かったんです。今ほどウェブが普及していなかったので連絡先がわからず、当時よく担当されていたフィガロの編集部に電話をして事情を話すと、「連絡先を教えてください、伝えます」とつないでくださり、1ヶ月後にご本人からご連絡をいただいたんです。ちょうど、会社を辞める2ヶ月前でした(笑)。
ー好きなスタイリストの方に最初に辿り着けるなんて、奇跡ですね。
そうなんです。それに今ほどスタイリストが前に出る時代ではなかったので、いく子さん自身について何もわからなかったんです。でも本当に愛ある素敵な方で、ファッションのノウハウだけではなく、メイクやカルチャーについてなど全てを学ばせていただきました。3年間アシスタントを経験しましたが、体力的に辛いことはあっても第一線の現場での仕事は貴重でしたし、いく子さんは厳しいけれど理不尽なことで怒ることは一度もなかったので、毎日楽しくて本音を言えば辞めたくなかったくらいです(笑)。
ー独立された後、憧れのスーパーモデルの方々と仕事をする機会は?
リンダは、彼女が日本に来日した時にスタイリングを担当させてもらいました。彼女は思ってたより小柄でしたが、いざ撮影となればオーラがものすごくて。顔つきや佇まいが、やっぱりスーパーモデルだと感動しました。あと一番好きなのに、唯一ナオミはショーでも見たことがありません。ずっと尊敬しているデザイナーのアライア(Azzedine Alaia)の洋服を着ているナオミが大好きで、アライアとナオミが揃う姿をもう見ることができないのは残念ですが、これからも2人は憧れの存在です。
ー仕事をする上で、レナさんが一番大事にされていることは?
モデルであっても、それぞれ体型に違いがあります。だけど私たちスタイリストは限られたサイズ幅やサンプルを使うしかないんです。だから、どうしたらかっこよく着せることができるかを日々考え、経験を積むことで、技術が培われていくんだと思うんです。スタイリストの仕事はコーディネートを組むことで完了すると思われることも多いのですが、バランスを見て着せるまでが仕事だと私は考えています。この企画だったら、私だったら、今だったら……と想像して、自分なりのバランスを考えるんです。だから同じ服でも、着せる人によって全然違う。私がつくったスタイルが、チームにとっても、見る人にとって刺激的なもにのなれば嬉しいですね。
ーレナさんが作るスタイルはもちろん、レナさん自身のスタイルも注目を集めています。最後に、仕事をする上で3種の神器をあげるとしたら何ですか?
クローゼットの中に多いアイテムは黒いジャケットと白いシャツかな。意外と私トラッドなんです(笑)。シンプルなものの方が圧倒的に多いけれど、ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)やメゾン マルジェラ(Maison Margiela)のようなデザインや、捻りが感じられるものも好きですね。白シャツは、ボディラインを絞った女性らしいシルエットよりはコットン製のメンズライクなものを選びます。肩幅に比べて胸囲はしっかりとした体型なので選ぶのが難しいのですが、袖をまくる癖があるので多少サイズが大きいメンズがしっくりくることも。クローゼットの中にあるジル サンダー(JIL SANDER)やジバンシィ(GIVENCHY)、ドリス(DRIES VAN NOTEN)なんかはメンズのものも実際に持っています。あと襟の高いものには目がなくて、今季フェンディ(FENDI)が発表したハイカラーのドレスシャツは欲しいと思っています。あと、キャミソールも大好きです。
Rena's Select
左から FENDI リボンタフタブラウス、Y/PROJECT アシンメトリーシングルジャケット、CARINE GILSON キャミソール
ー確かに!レナさんのスタイルはいつもクールですが、どこか女性らしさを感じさせます。
レースやフリルが昔から好きなんですが甘々な着こなしは自分には似合わないとわかっています。根がコンサバなので先ほどの2アイテムとそういった甘かったり女性らしいアイテムをミックスすることでモードな印象に仕上げるようにしています。そういった意味でキャミソールは大活躍するんです。とくに繊細なレース使いが凝っているランジェリーブランドのものが好きで、パリに行った際にはよく買いにいきます。Farfetchにもあるんじゃないかな?カリーヌ ギルソン(Carine Gilson)は行きつけで、好きなブランドの一つです。