今、ヴィンテージデニムが熱い。その価格が数百万で取り引きされる希少性の高いジーンズが存在するなど、その価値は年々高まる一方となっている。こうしたブームの一躍を担っているのが、Farfetchの公式パートナーブティックでもある、老舗ヴィンテージショップ「Fake α(フェイク・アルファ)」と、その系列店である「BerBerJin(ベルベルジン)」のディレクター藤原裕だ。今回のStyle Guideでは、Levi’s社と共同でLevi’sの501XXの歴史を集約した書籍『THE 501 XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS』をリリースするなど、デニムを知り尽くした彼がヴィンテージデニムの魅力を紹介する。前編は藤原裕とデニムとの出合いについて聞いた。
Photo : Fabian Parkes Text&Edit : Mio Koumura
デニムに興味を持ったのはいつ頃からですか?
父親がファッションの仕事をしていたので、物心ついた頃から雑誌を読んだりしていてファッションは身近な存在でした。デニムに興味を持ったのは小学生5年生の時、親に「3,000円で選んできてね」と言われたのに店員さんに接客されて、結局6,800円する501のレプリカジーンズを買ったのが最初です。それもブルーじゃなく、ブラック(笑)。
ヴィンテージとの出合いも早かったんでしょうか?
それは高校生の時ですね。1つ上の先輩にすごくおしゃれな方がいたんです。彼の実家がお金持ちで、当時人気のあったナイキのスニーカーやヴィンテージジーンズをたくさん持っていて、初めて見たときは衝撃でしたね。それで興味を持って高知県内の古着屋を見て回って、高校2年生の時に4万5000円で初めてヴィンテージジーンズを購入しました。当時サッカー部に所属してたのでバイトができなくて、親からもらう1日の昼飯代1000円の半分を貯金し続けて。そのジーンズを見つけた時も実は2万円くらいしか貯まってなかったんですが、頭下げて取り置いてもらって、友人に2万円借りて購入したんです(笑)。ジーンズ自体は上京した時に友人に貸してそのまま紛失しちゃったんで手元にはないんですが、当時それを履いた姿で『チェックメイト』という雑誌のスナップページに掲載してもらったページだけは残ってます。今でもいい思い出です。
東京に来てすぐに古着屋さんに?
東京に出るために就職先を決めて18歳で上京しました。紙を扱う会社で、早稲田に通勤しながら、仕事終わりには古着屋さんを回って、週末は必ずフリマに出かけてという日々です。当時配達もしていたので、途中に古着屋があれば寄ったりしてね。給料はほぼすべて古着につぎ込んでましたね。でも19歳になり「このままでは自分が腐ってしまう」と感じ、成人式の前にその仕事を辞めて、退職金握りしめて友人を訪ねがてら各地の古着屋をまわったんです。それでやっぱり古着屋で働きたいなって。
最初に働いた古着屋さんはどちらだったんですか?
それがBerBerJinなんですよ。東京に戻ってすぐは働き口が見つからなくて、キャットストリートで路上フリマをしながら4ヵ月くらいプータローをしていたんです。その時に知り合った方に「最近、穴場の古着屋できた」と連れて行ってもらったのがBerBerJinでした。当時は竹下通りから1本裏に入った原宿十貨店というビルに入居していて。その頃には別のアルバイトしながらアメリカに行ったりしていたんですが、通っているうちに「ここで働きたい」と思い直談判したんです。そうしたら「近々移転するんだけどそれまで待てる?」と言われ、2000年9月に移転が決まるまでは別のバイトをしながら待って。決まったということで晴れて立ち上げメンバーとして参加できたんです。ちょうど21歳の時です。
それから20年。現在は店長ですね。買い付けも藤原さんが?
今は社長と若いスタッフが担当していますが、若い頃はしていました。初めての買い付けに行ったのは、実はお店で働き始める前。10万円の買い付けツアーがあると聞いて、同行したんです。今思うと「この旅、本当に10万もする?」って感じでしたけど(笑)。でもすごく刺激的で、そこから1年して入社後、初めて仕事として連れていってもらいました。22歳になったばかりの夏でしたね。今はロサンゼルスが中心ですが、当時はアウトドア系も置いていたので、ポートランドやシアトル、カナダのバンクーバーを回ったり。僕が23歳の時には、会社がアメリカにアパートを借りたので、3ヵ月間、観光ビザで滞在して、日本に帰国して、また渡米するという生活を続けていました。
デニムに関する知識はどうやって身につけたんですか?
96~98年頃にヴィンテージブームがに起こって、そこで僕もさらにハマりました。当時の雑誌や古着屋さんを回ってオーナーさんと話をしたり、でも何よりBerBerJinに入って数を見られるようになったのは大きいですね。本店の地下にはデニムがびっしりあるんですが、あれだけあるとマニアが来店するので逆にそういった方々に教えてもらったり。とにかく見て来た数には、自信がありますね。